平成テクノス株式会社 有馬社長と川口社長の対談
1.有馬社長とメインマークとの出会い
有馬社長 | もう18年も前になりますが、メインマーク社のオーナーの故フィリップ・マック氏と川口社長と3人で大阪のヒルトンホテルでお茶をしたのが最初の出会いでした。 |
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川口 | 僕らも日本にテラテック工法を輸入したばかりで施工実績も少なく、業界の大先輩である有馬社長との出会いに大変感謝しています。有馬社長とフィリップはお互いに技術者で言語の壁を越えて技術的なお話をされていましたね。 |
有馬社長 | フィリップ氏とは親友以上のお付き合いでした。オーストラリアに招待され、彼の家に家族で泊まり、フィリップ氏のヨットでシドニーハーバーをクルーズしたり、ブルーマウンテンズ国立公園を散策したり楽しい思い出がたくさんあります。 |
川口 | そうですね、お二人の関係は特別でしたね。私も失礼ながらお二人が二人とも子供の様にわくわくしたお顔で話されているのを覚えています。 |
有馬社長 | 川口社長には日々の仕事はもちろん、JOG工法を海外進出させる際に非常にお世話になりました。 2011年東日本大震災の半月ほど前にニュージーランド(以下NZ)のクライストチャーチで起きた地震では、広範囲にわたり液状化を伴う不同沈下の被害が発生しました。NZでもテラテック工法などで施工されており、地盤に関する総合技術展開を目標としていたメインマーク社から強大な復元力を特長の1つとするJOG工法をぜひ導入したいとの要請を頂き、業務提携を目指すことになりました。その際、川口社長に通訳して頂き、契約諸条件についても色々とご指導いただいたおかげでスムーズに話を進めることができました。川口社長なくしては成し得なかったことと思い、非常に感謝しております。なお10年近く経つ今でもNZでは、JOG工法の施工は続いており、オーストラリアやイギリスでも実績が増えつつあります。有難いことです。 |
(左)平成テクノス社 有馬社長 (右)フィリップ・マック
2.JOG工法の開発秘話と施工実績
川口 | JOG工法は発想の転換から生まれたとお聞きしていますが、改めて開発秘話を聞かせていただけますか? |
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有馬社長 | 私どもは元々、地下鉄や下水道工事などで土砂崩壊や地下水の異常出水を防ぐために凝固剤を注入する地盤改良が本業でした。その最大の問題点は、凝固剤を目的外の範囲まで逸走させてしまったり、浸透しにくい土質では予定外に地盤を持ち上げてしまう恐れがあることでした。これらを解決すべく、長年、地盤の隆起を防ぐ注入技術(SCR工法)を磨いてきたおかげで、その逆の作用である積極的に地盤を持ち上げる技術(JOG工法)がまさに発想の転換により誕生しました。どのようにしたら持ち上げる力をコントロールできるかは比較的容易なことで、その力を20階建RCビルまで持ち上げるほど強大なものにすることにも成功しました。 JOG工法の機械装置についても必要に迫られ、開発から製作まで全て自前で行っています。 フィリップ氏とは海外で使いやすいように海上コンテナを改造して、その中にJOG工法の機械装置をコンパクトにセットできるような打ち合わせも頻繁に行いました。またフィリップ氏は弊社が磨きをかけたSCR工法についても興味を示されて、海外での導入を進めようとしていた矢先に他界され本当に残念でした。 |
川口 | おかげ様で私たちもJOG工法とテラテック工法のコラボで解決できた案件があります。2019年関西にある部品製造工場の案件では、最初に「空洞充填できないか」とのお問い合わせをいただき訪問すると、地盤強化後に躯体を持ち上げて沈下を修正する必要がある現場であることがわかりました。御社にご連絡し急遽現場を見ていただきましたね。同工場内にはもう1箇所修正が必要な場所があり、こちらは薬液注入工法で地盤改良した後にテラテック工法で沈下修正をしました。御社とのパートナーシップでお客様のお悩みを一度に解決できたことを嬉しく思います。 |
有馬社長 | 最近の国内コラボ案件として私にとっても印象深いですね。1番のハイライトはやはりNZで行ったクライストチャーチ美術館の沈下修正工事でしょうか。あれはJOG工法として最大規模(同時施工本数289孔)の工事でした。現地でフィリップ氏と詳細な打ち合わせを真剣に行ったことを懐かしく思い出します。 施工後、フィリップ氏本人からわざわざJOG工法に謝意を頂き、非常に光栄でした。またロンドンで開催された「2016年グランド・エンジニアリング・アワード」でメインマーク社がNZで行ったクライストチャーチ・アート・ギャラリーの水平化工事が「最優秀国際プロジェクト賞」の栄誉に輝き、その技術力が高く評価されたことを大変嬉しく思います。 |
クライストチャーチ・アート・ギャラリーの水平化工事
3.お客様がJOG工法を選択される1番の理由
川口 | JOG工法はとても特殊な工法でお客様もなかなかその仕組みを理解していただけないかと思いますが、お客様がJOG工法を選ばれる理由は何でしょうか? |
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有馬社長 | 主には次の3点が挙げられるかと思います。 まず最初に、重量物の復元の場合、ジャッキアップ工法に比べ、対象物の外周や底部を掘削する必要がなく、安全で工期が短く、局部的な力が作用しにくい上、低振動で低騒音な工法であることです。2番目には、一般注入やコンパクショングラウトに比べ周囲への影響が非常に少ないこと、そして3番目は、ミリ単位で確実にコントロールできる点です。 |
JOG工法の施工現場
JOG工法の簡易説明
4.今後の2社の展開
川口 | 「自然災害大国 日本」において沈下修正のニーズはますます高まるものと予想されます。今後も平成テクノス社とは特別の関係を維持して他社ではできない沈下修正工事を行ってゆきたいと思っています。有馬社長は私たちメインマークとの取り組みを今後どの様に展開・発展させてゆきたいですか? |
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有馬社長 | メインマーク社の情報発信力には大きな期待を寄せています。 具体的な取り組みとして施工班の共有でより多くの工事を行ってゆきたい、コラボ案件での協業を増やしたい、そしてこれからも各々の強みを活かし、良きライバル・良きパートナーとしてお互いが成長できる土壌を作ってゆきたいです。 |
川口 | お話いただける範囲で結構ですが、新しい取り組みについて教えてください。 |
有馬社長 | JR東日本とのJOG工法の共同開発が終わり、実用化が始まりました。 首都圏の交通の要である鉄道の保守の一部にJOG工法がスタンダードとして認定され、実績も増えていることは有難いことだと思っています。 またフィリップ氏がSCR工法についても興味を示されて、海外での導入を進めようとしていた件につき、誰か後任の方が引き継いでいただいて前進が図れれば有難いと思っております。 |
(左)平成テクノス社 堀内専務 (中央)メインマーク株式会社 川口 (右)平成テクノス社 有馬社長
【 語り手 】
平成テクノス株式会社 代表取締役 有馬重治氏
HP:http://www.heisei1.com/
2000年JOG工法の最初の特許取得
論文発表・講演
・注入による傾斜構造物の修復技術 (土木学会誌 vol.88)
・軟弱地盤の掘削工事における近接建物の沈下抑制対策と効果の検証 (第54回地盤工学シンポジウム)
・インターバル式 圧力注入による軌道の沈下修繕工法の開発
(土木学会第65回学術講演会)