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国士館大学 橋本教授とメインマーク清水の対談

北海道で採用された盛土造成地の地滑り対策

1.地滑りのメカニズムについて

清水 地滑りが起こるメカニズムについて教えていただけますか?またどういう場所で地滑りは起きやすいのでしょうか?
橋本教授 地滑りは、斜面の下部に滑り面という滑り台があると考えてください。通常時は、盛土自体の重さで「滑り出そうとしている力」に対し、摩擦力などの「抵抗する力」の方が大きいために、斜面は安定しています。地滑りのメカニズムとしては、「抵抗する力」が減少するパターンと「滑り出そうとしている力」が増加するパターンの2つがあります。
「抵抗する力」が減少するパターンとしては、梅雨時の長雨や台風の豪雨時の降雨、急激な雪融けの後など、地下水位が徐々にまたは急激に上昇する場合です。地下水位が上昇することにより有効応力すなわち浮力が生じて、「抵抗する力」の方の摩擦力が減って滑りやすくなり、すべり面より上の土塊が水を吸って重くなることの二つの作用により、徐々に「滑り出そうとする力」の方が大きくなってしまうため地滑りが発生します。また「滑り出そうとしている力」が増加するパターンとしては、地震発生や積雪・建物等の荷重増加がある場合です。地震時には、すべり面上部の土塊が「滑り出そうとする力」に「地震力」が加わり、「抵抗する力」を上回った場合、地滑りが発生します。
地滑りは特定の地質または地質構造の所に多く発生します。第三紀層の酸性白土や黒色頁岩(こくしょくけつがん)などが分布している山形、新潟、富山、長崎、佐賀などの諸県は地滑りの多い地方です。その他に徳島県吉野川流域等の中央構造線や静岡県由比地方等の大地溝帯(フォッサマグナ)などのような地質構造線に沿って、断層などのために地質構造が細切れになっている所では集中的に生じています。
一方、質の異なる盛土地盤の境目で引き起こされる地滑りがあります。具体的には、道路や住宅地として開発されたエリアでの「盛土造成された土地」などが対象となります。このケースでは、急斜面でなくとも緩斜面でも切盛境(きりもりざかい)や盛土が十分な締固めがなされていないため、地滑りが発生する可能性があります。この盛土造成地は、現在でも、多くの地域で広範囲にわたり存在し、特に新興住宅として開発されたような場所が要注意です。阪神・淡路大震災によって起きた大規模な地滑りでは、仁川百合野町地区で13戸の家屋が倒壊し、34名の尊い命が奪われました。

2.北海道の盛土造成地で地滑り対策工事に至った背景

清水 北海道の盛土造成地で地滑り対策工事をさせていただいておりますが、工事前の状況や工事に至るまでの背景を改めてお聞かせいただけますか?
橋本教授 2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震は、厚真町で北海道初の震度7を記録し、死者44名、負傷者785名、全壊家屋479戸、北海道全域の停電という大災害となりました。特に厚真町周辺の丘陵地域では、斜面崩壊・土石流を含む地滑りが8,000箇所以上も発生し、地震による死者の8割以上となる36名の尊い命が奪われました。北海道厚真町周辺の山肌は、まるで爪で引っかいたような跡が散見され、見渡す限り山の斜面が崩れ落ち、家屋が飲み込まれました。地震直前の1週間前の厚真町では、約30ミリの雨が降り地盤が緩んでいたところに、震度7の地震が発生した複合災害でした。厚真町新町・豊沢地区では谷部の盛土が液状化し、地滑り・噴砂による地盤沈下などで住宅の沈下・傾斜が多数生じました。国の主導で有識者による現地調査および被害状況の確認が行われ、対策や工法が検討された後、住民説明会を経て工事に至りました。
清水 やはりこうした状況下では、橋本教授を含む有識者にまず最初に相談がいくのですね。

3.地下水位低下工法が採用された決め手

清水 盛土造成地の対策工事にあたり、様々な工法が検討されていたかと思います。地下水位低下工法のどのような所が決め手となり採用されたとお考えですか?
橋本教授 地滑りの対策工法は、抑制工と抑止工に区分されます。抑制工は、地下水の状態、盛土造成地の地形などの条件を変化させることによって、崩壊および変形を防止する工法であり、地下水排除工、押え盛土工などがあります。また抑止工は、構造物などを設けることによって、その抵抗力により崩壊および変形を防止する工法であり、固結工法、抑止杭工、グラウンドアンカー工などがあります。地下水位低下工法は、この抑制工の地下水排除工となり、地滑り対策の内、最も効果的なものです。北海道厚真町新町・豊沢地区は前述の被害状況だったため、国土交通省建設技術研究開発助成制度として採択された新工法のレジェンドパイプ工法による地下水位低下工事が計画されました。この推進型の地下水位低下工法は、道路内で下水道工事と同様に施工でき、本工法に使用している暗渠集排水管MPDパイプの口径は大きく、大量の排水が可能で、しかも目詰まりの心配も少ないため地下水位低下の効果がこれまでよりも格段に上昇します。また費用面では他工法よりも工事費が安く、維持管理コストも大幅に減らすことができることが決め手となりました。現在、本工法は2018北海道胆振東部地震の復興対策として北海道北広島市大曲並木地区、札幌市清田区美しが丘地区、2016年熊本地震後の熊本市液状化対策工事、2011年東日本大震災後の千葉市液状化対策工事、その他に豊洲市場6街区排水管敷設工事など、地滑り対策、液状化対策、排水対策として採用されています。

地下水位低下工法


4.地下水位低下工法による対策工事の効果

清水 地下水位低下工法で対策工事を行ったことでどのような効果が期待できますか? また従来工法との違いについてもご説明いただけますか?
橋本教授 地滑りは地下水に起因して地盤が滑る現象で、地滑りと地下水は密接な関係があります。この主要な対策工法は、抑制工の地下水排除工で、どの程度地下水位を低下させすべり面に働く水圧を低減し、どの程度まで安全率を上昇させることができるかが問題となります。従来の地下水排除工である横ボーリング工や集水井工は、人が住んでいない谷部の地下水を集水しようとする自然地盤を対象に考えられてきました。長期的に見ると適切な維持管理ができないため目詰まり等により排水性が低下し、再び、地下水位が上昇し、予想していた安定性が確保されない状態になり、施工してあるのに効果が発揮できずに再地滑りが発生しています。
一方、推進型の地下水位低下工法は、谷部にこだわらずに切土・盛土地盤を含む道路内で下水道工事と同様に施工でき、暗渠集排水管MPDパイプの口径は大きく目詰まりしにくいため、大量の排水を放流先に合理的に排水が可能で、その結果、地下水位を低下させることができるため、地滑り対策だけでなく、液状化対策にもなる効果があります。

メインマークが開発した「暗渠集排水管MPDパイプ」


「暗渠集排水管MPDパイプ」の詳細はこちら

5.地滑りリスクへの対策のすすめ

清水 国土交通省によると日本全国に地滑りの土砂災害警戒区域は約13,700件以上(2020年12月末時点)あります。地滑りは技術的に予測が困難であるため、土砂災害警戒情報の発表対象になっていません。危険エリアはどのような対策を講じたら良いでしょうか?
橋本教授 国土交通省の重ねるハザードマップには、洪水・土砂災害・高潮・津波・道路防災情報・地形分類のアイコンがあり、その中の土砂災害をクリックすれば、土石危険渓流・急傾斜地崩壊危険箇所・地滑り危険箇所が分かります。また市町村のHPにも掲載されています。危険エリアの対策工法は、まず地滑りの主原因である地下水を下げる地下水排除工を前提に対策する必要があります。必要安全率に足らない安全率分は、その他の抑制工や抑止工による対策を行うことになります。北海道胆振東部地震後に、厚真町、北広島市、札幌市で採用されている安くて維持管理が容易で効果的な推進型の地下水位低下工法が新たな地滑りの対策工法として期待されています。
重ねるハザードマップはこちら

(左)メインマーク 清水 (右)国士館大学 橋本教授

国士館大学 理工学部 教授 橋本隆雄氏

【 語り手 】
国士館大学 理工学部 教授 橋本隆雄氏
HP:http://www.kokushikan.ac.jp

・資格
博士(工学)

・著書
- 建築・土木基礎の耐震設計と解析/総合土木研究所
- 地山補強土工法設計・施工マニュアル/地盤工学会
- 防災工学/理工図書

・表彰
- (一社)全国建設技術協会 21 世紀の「人と建設技術」賞
  (千葉ニュータウン「いには野」防災まちづくり)
- (一社)全国建設技術協会 (一社)全国建設技術協会全建賞
  (豊四季台団地 団地再生事業)
- 地盤工学会事業企画賞(造成宅地の耐震対策に関す研究報告書作成及び講習会,浦安市耐震相談)
- 地盤工学会関東支部技術賞(公共施設と宅地の一体的な液状化対策としての推進工法による地下水位低下工法の開発)